沖縄県北部地域の精神看護の仲間とのつながりの場・精神看護研究会

この研究会を始めたきっかけは、沖縄県北部地域の精神科看護に携わる人が「共に学びつながる場」になれば、という思いからである。沖縄県は、南部地域、中部地域、北部地域の3つにわかれており、那覇市を中心とした人口の集中している南部地域では看護職者の学習の機会が多いが、名桜大学の在る北部地域は看護に関する研修会の開催が少ない。また、南部地域と北部地域の距離は80km程度あり、移動にも2時間程度要することから、仕事が終わった後に研修会や勉強会に参加するには相当な気合が必要である。

私たちが取り組んでいる名桜大学での精神看護研究会は、北部地域の精神看護に携わる皆さんが気軽に参加でき、日頃困ったり悩んだりしていることを自由に検討できる場となればという思いでスタートした。

現在、この研究会は2つのプログラムを柱に年に6回程度開催している。1つは、精神看護におけるトピックについての講演や研修会の開催であり、もう1つは「事例検討会」の開催である。臨床における気がかりな事例や、困った事例などを精神専門看護師にも参加してもらい参加者による自由な意見交換を行うことにより、気づきを深めている。

本稿では、名桜大学人間健康学部看護学科精神看護領域の教員達が2011年に始めた「名桜大学精神看護研究会」の内容をご紹介し、これまでどのような取り組みをしてきたかを紹介したい。

【2011年度】

精神看護研究会は2011年9月17日にスタートした。初年度は、大学院生の研究テーマであった、「精神障がい者へのふれるケア」についてと、看護教育に関する内容を合計6回実施した。「精神障がい者へのふれるケアとしてマッサージの活用」では、「タクティールケアの方法」「タイ式マッサージの実際と看護への応用」など、実際に研究会の場所でマッサージを実施し自律神経の測定を行いリラクセーション効果について生理的に検証した。また、私の研究テーマである「慢性期統合失調症患者へのフットマッサージの研究」成果について発表を行った。看護教育に関しては、授業方法や実習におけるカンファレンスのあり方、学生のモチベーションを上げるために教員がどのように接したら良いのかなど沖縄県の精神看護に携わる専門学校や大学の教員が参加しディスカッションが行われた。

フットマッサージ体験会
フットマッサージ体験会
自律神経測定の様
自律神経測定の様

【2012年度】

初年度の研究会では臨床の看護師の参加が多かったことから、2012年度は、臨床で活かせる講義内容に絞った。平安病院の看護師さんより「認知行動療法を活用した看護過程の展開」、「セルフケア援助のための看護面接の活用」、「看護実践に心理教育を活用する」、「医療現場の暴言、暴力防止プログラムCVPPPの本質を知って看護に活かそう」などのテーマで行われた。参加者からは、「とても刺激を受けた。まだまだ未熟で分からないことばかりですが、次回もぜひ参加して多くの刺激を得て自分の学びに繋げ、学び続けるナースになりたいと思います」など、満足という意見が多く、このように臨床で活用できる内容は臨床の看護師の刺激になっていた。

CVPPP研修会
CVPPP研修会

【2013年度】

2013度は、臨床で活かせる講義、事例検討会、看護者のキャリア支援について、映画上映会など様々な内容を行った。琉球病院の看護師の伊波さんから「精神科における薬物療法最前線―クロザリル治療―」琉球病院副看護部長の西谷博則さんから「医療観察法指定入院医療機関における医療と看護~現状と今後の課題」についてお話をしていただいた。また、名桜大学学部生が発起人となり、新垣病院映画『夢どう宝』上演会」が行われた。H24 年 8 月に新垣病院デイナイトケアセンターで結成された映画同好会で、短編映画を完成させ、翌年度4 月に東京で開催された『ラブストーリー映画祭』に出品、上映された。監督も出演もデイナイトケアのメンバーさんが中心で、スタッフの方がサポートして制作された。 映画上映会は、監督の古謝さんと主演されたメンバーの1人伊礼さん、スタッフの方2名の計4名にお越しいただいた。映画上映後には、会場の参加者の方々も精神疾患理解が深まるようなディスカッションができ、多くの方から来てよかったとのコメントを頂いた。

2013年度
夢どう宝上映会
夢どう宝上映会

想では、「精神疾患について意識させたら傷ついてしまうのではないかと思っていたが、普通に接して、笑って、しゃべってコミュニケーションをとることが、本当に良いことだと知った」「和やかな会でとてもリラックスでき当事者と話をしやすい雰囲気で話が聞けてよかった。」など、当事者と交流することで誤った認識の変化につながったと考えられる。

【2017年度】

伊藤大輔先生によるCBTの研修会 1
伊藤大輔先生によるCBTの研修会
伊藤大輔先生によるCBTの研修会 2

2017年度は、琉球大学教育学部生涯教育課程、伊藤大輔先生にお越しいただき。「ケア対象者の認知と行動にはたらきかける技法を学び実践に生かそうというテーマで、認知行動療法の初級編および実践編を開催した。多くの方に参加していただいた。具体的な方法を参加者に体験していただく講義であったため「わかりやすい講義で頭に入りやすかった」という意見が多く、感想として「沖縄でなかなかCBTを重点的に教えてくださる場がなかったため、とても良い機会になった」「患者さんへの支援だけじゃなくて、人間関係や家族とのかかわり、自身が楽に生きていくためにも使っていきたい」との多くの手応えのあるコメントをいただいた。

【2018年】

ラグーナの森越先生と川端さんとの食事会
ラグーナの森越先生と川端さんとの食事会

2018年度は、長期入院患者の地域移行に伴い地域精神看護に関するテーマで企画を行った。今年度は、鹿児島県に在るラグーナ出版の代表森越まや先生にお越しいただいた。ラグーナ社は、精神障がい者と共に、メンタルヘルスに関する本の企画・編集・制作・販売を行っている企業です精神病や障がいを抱える方々が偏見なく暮らしやすい社会が訪れることを目指し、2006年に立ち上げた会社である。精神障がい者が、安定して雇用を続けていくコツ、精神障がい者が働くとはどんな意味があるのかなど、精神保健の場で働く人と共有しディスカッションを行った。また、地域生活支援センターウエーブの安村勤所長による「やんばるで暮らす精神疾患を持つ人を地域で支えよう!」というテーマで地域の精神保健福祉の現状について参加者とディスカッションを行った。

おわりに

この精神看護研究会は、私が大学院生の頃に始まった研究会である。この7月で77回目の開催を行うことができた。毎回の開催は、教員や院生の得意なジャンルや先生方のコネクションを活用し講師を探し、様々な方にお越しいただき今も継続することができている。

話は変わるが、私は看護学校卒業後、一般病棟で勤務していたが、ひょんなことから、沖縄の地に移り住むことになり、精神科病院で勤務することになった。精神科病院入職後、高齢者の病棟で勤務しており、まさか自分が精神科病棟で働くとは思ってもいなかった。長期入院者退院促進が始まった平成17年、突然師長として精神科病棟に異動となった。精神科病棟では、これまで経験したことがない様々な問題やジレンマの連続で、自分の頭の中をどう整理していいのかわからなく困り果てていた。そんな折、沖縄県北部地域に看護大学が開設することとなり、教員との交流が始まり、大学に出入りする機会が増え、事例を振り返る機会をいただいた。その経験は、自分自身が救われると同時に、相手の行動の意味を考えることで看護の手掛かりとなり、精神科看護の面白さや奥深さに気づかされた。私自身のこの経験から、精神看護研究会は、この北部地域の医療職者が、私のように迷ったときに気軽に相談したり愚痴を言ったり、また、共に学習する場として機能すればいいなと思いながら、今後も発信していきたいと考えている。